23日に歌った中から、レイナルド・アーン(1875-1947)作曲の「クロリスに」をご紹介したいと思います。
(以下、私見含みますこと、ご了承くださいませ)
題名のクロリスとは、ギリシャ神話に出てくる、大地の精クローリス(青ざめた顔の女の意)のこと。
クローリスは、西風のゼピュロスに愛され、一度死に、春と花の女神へ生まれ変わるのですが、
この歌は、西風ゼピュロスの愛を受け入れ、純潔な処女から美しい一人の女性へと生まれ変わる、変容の物語。
その官能的な瞬間を描いた場面なのです。
《訳詞》
本当かい?クロリス、
君が僕を愛しているのは…
(君が愛してくれているのは、分かってるのだけど)
たとえ王でも、僕ほどに幸せな気持ちを知らないだろう
死なんて、とんでもないこと、
たとえ僕の運命が天国の幸せと引き換えると告げても
人々がアンブロジについて語るどんなことも
僕の空想を掻き立てはしない
君の瞳の輝きの魅力ほどには
☆アンブロジアとは、ギリシャ神話の神々が食べる不老不死の源と言われる食べ物のこと。
17世紀の天才詩人といわれるテオフィル・ド・ヴィオー(1590-1626)の詩。アーンは、この時代の詩であることを意識し、バッハ風の古典的メロディや装飾をつけています。